2023年に行われたAGT(アメリカズ・ゴットタレント)で、決勝まで進んで大活躍した日本のダンスグループ「アバンギャルディ」。
(彼女たちのAGTでの活躍は「アバンギャルディって何者?魅力を総まとめ!」でどうぞ)
Youtube上の彼女たちのダンス動画には「何度見ても見飽きない」「見るのをやめられない」という讃辞が殺到しています。
アバンギャルディのダンスには、いったいどんな魅力が詰め込まれているのでしょうか?
「見どころ満載」で整理のつかないこのスーパーパフォーマンスの魅力を、少しでもかみ砕いて紹介させていただきたいと考えました。
そこで今回は、彼女たちのダンスの大きな特徴である「シンクロした動きの鮮やかさ」に着目して、いくつかの「ユニゾン(同じ振り付けを同じタイミングで行うこと)」をご紹介します。
長年アクロバット・パフォーマンスに携わり、その動作を1コマ1コマ図に描いてきた管理人が独断と偏見で7つのパートを選び、イラストで解説させていただきますのでご覧ください。
なお各パートには、センスのかけらもない「仮称」がつけられている場合があります。
不快になった方には申し訳ありませんが、聞かなかったことにしてくださいね(汗)。
「クスっと笑える振付7選」と「大技・力技の振付7選」もまとめてありますので、どうぞ!
さて、あなたはどの振り付けがお気に入りでしょうか?
オマージュダンス!?「阿波踊り風ユニゾン」(Money,Money,Money)
1番の後半、サビとサビのつなぎの「アハ~アハ~」に合わせて、19人全員で行われています。
この振り付けは、YouTubeのコメント欄でも「これ阿波踊りですよね」とか「アハ~アハ~に『阿波』をかけたんじゃない?」などと、阿波踊りがモチーフになっているという指摘がたくさん見受けられました。
中には外国の方から「これは日本の伝統的なダンスの『阿波踊り』をオマージュしたものです」という解説もあり、その世界的な知名度がよくわかります。
たしかに右手と右足、左手と左足を同時に出すような歩き方、つまり「ナンバ」の動きは阿波踊りを連想させますよね。
しかし実際に確認してみますと(②の白い円内)、腕のポジションは横に広げるのではなく、むしろ前後や上下に広げられているのがわかります。
また、この曲の「アハ~アハ~」のパートと阿波踊りではそもそも躍動感が違いすぎるので、動作そのものを取り入れたかったのではないんじゃないでしょうか。
私としてはakaneさんが得意とする「歌詞を振り付けにする」手法の亜流として、ネットで指摘されていたように「アハ~アハ~に『阿波』をかけた」という説を支持することにします(笑)。
有名なダンスの振り付けをオマージュするのもいいですよね!
このMoney,Money,Moneyではイントロの終盤部分でベジャールの「ボレロ」もオマージュされていると思いますが、せっかくAGTという世界の大舞台に立ったんですから、もう少し派手にアピールしても良かったんじゃないでしょうか?
有名なダンスをオマージュするパートが、1つのプログラムに1つ入っているくらいですと、観る側も「探す楽しみ」ができていいかもしれませんね!
「ヘッドロール」のユニゾン(アイドル)
振り付けで言うと「トラストフォール(担ぎ上げられた1人が背中向きに倒れていく)」のすぐ後のところで14人で行われています。
「ヘッドロール」で検索すると、上位には「ベリーダンスでターンしながら頭を振る技術」が表示されます。
でもここで行われるヘッドロールはそういうものではなく、むしろ歌舞伎の演目として有名な「連獅子」で行われる、あの「毛振り(立っていても床に着きそうな長さの赤い髪の毛を振り回し、床に叩きつけたりする技)」に近い感じがしますね。
・・・こんなところにも「日本の魂」が宿っています!
ワイルドな「マネマネマネー!」の部分の振り付け(Money,Money,Money)
1番のサビの頭の「マネマネマネー!」に合わせて、19人全員で行われています。
私はこの振り付けが好きで好きで(笑)、何度も繰り返し観ています。
お金を追いかけるようなストレートなアクションは「その場で足をバタバタさせているだけ」と言えばそうかもしれませんが、上半身のポーズの座りの良さと必死の表情、そしてこれらが全員同じテンションで行われていることで、こんなに斬新なユニゾンになるのかと私は感嘆してしまいます。
『Money,Money,Money』はAGTで行われた3曲の中で、最も大技が少なく笑いのパートも少な目だと感じるのですが、そのかわりに抽象的な振り付けでのユニゾンやカノンが最も芸術的な印象を与えるプログラムだと思います。
その中でこのお金を追いかけるアクションは芸術性の対極にあり「具体的」かつ「野生的」で、この美しいダンスにピリッとした刺激を与えてくれる「スパイス」のような存在なのではないでしょうか。
起承転結の「転」にあたる曲のターニングポイントに、野生的でインパクトの強い「お金を追いかける」というアクションを当てたのが、見事にハマっていると思います。
オマージュダンス!?「オタ芸風ユニゾン」(アイドル)
「その瞳が」から「嘘でも」に合わせて、19人全員で行われています。。
全コマを全員描くとコマ数が多くなりますので、以下は代表して5人のダンスで3コマずつ描いていきますね。
オタ芸はもともと両手に光るサイリウムを持って振り回し、その軌跡をアピールするダンスですので、上半身だけの動きではありますが、非常にダイナミックです。
アバンギャルディがやるとさらに動きがキレッキレですね!
ただ「これがAGTの舞台ではどう受け止められたのか?」ということについては、おそらく賛否が分かれるんじゃないかと思います。
オタ芸は日本のサブカルチャーですから、海外なら「知る人ぞ知る」「マニアなら知っている」というレベルじゃないかと思いますので、会場やケーブルテレビで観ていた「採点にかかわる人」の大半は「ちょっと毛色のちがう振り付けのパート?」という程度の解釈が多かったんじゃないでしょうか。
鮮やかなシンクロ「リッチメンズ・ワールド」の部分の振付(Money,Money,Money)
1番の「マネー,~,~」の後の「~リッチメンズワールド」に合わせて、19人全員で行われています。
振り付けに適当な仮称を考えるのが難しかったので、そのユニゾンが行われている歌詞の一部をとって仮称としました。
これも以下は代表して5人のダンスで3コマずつ描いていきます。
この②の1コマ目から始まる、左腕での円を描く動きがエネルギッシュでスピードがあり、気持ちが良くて何度も観てしまいます。
一方、後半部のターンは高さを出しながら回っているのですが、それだけではなく挙げた右腕と下した左腕が高い位置と低い位置で「逆の位相」で回転するのでとても立体感があり、前半のエネルギッシュな動きと合わせて非常に「華」があるパートだと思います。
言語的ではなく抽象的な振り付けの中で、ダイナミックなものがダイナミックに、優雅なものが優雅に見えるダンスの基本的なスキルがあってこそ、コミカルなものがコミカルに見えるのではないでしょうか。
その意味でここのパートは、アバンギャルディがコミカルではないフュージョンのダンサーとして直球勝負を仕掛けているパートに見えて、私はとても惹かれてしまいますね。
緩急のある「オールウェイズ・サニー」の部分の振付(Money,Money,Money)
転調後の2回目の「マネー,~,~」と「オールウェイズ サニー」に合わせて、19人全員で行われています。
これも振り付けに適当な仮称を考えるのが難しかったので、そのユニゾンが行われている歌詞の一部をとって仮称としました。
以下は代表して5人のダンスで3コマずつ描いていきます。
ユニゾンではありますが、このターンは右回りと左回りが初めから混じっており、1回目と2回目のターンの回転方向が切り返しになっています。
①では回転方向を矢印の赤と黄色で実際のとおりに描き分けてみましたので、確認してみてください。
この③の2コマ目の大きくゆったりした動きが、ターンを切り返す激しい動きの直後で強いアクセントになっており、ダンス全体の印象をアーティスティックなものにしていると感じます。
ちなみに③の3コマ目の直後は四つん這い歩きで、いきなり「謎の生物」になっています(笑)。
・・・その「雰囲気の落差」もアバンギャルディらしく、面白いですね(笑)。
このMoney,Money,Moneyは、AGTで行われた3つの作品の中で最もリズムの変化に富んでおり、それを振り付けが上手く引き出すことに成功したダンスなのではないでしょうか。
AGT視聴者がシンクロに驚愕した!シンデレラハネムーンのイントロ部分
イントロの後半部に19人全員で行われる、圧巻のユニゾンです。
スタート時の花のようなフォーメーションから「リフト&キック」でブレイクした時点で、観客には「おお、なかなかやるじゃないか」くらいの印象はあったと思います。
しかしこの①から②の動きのシンクロを見て、観客や審査員・視聴者は一瞬で「これ、普通じゃない!」と驚愕したのではないでしょうか?
アバンギャルディが世界の視聴者のハートを鷲掴みにした、記念すべきユニゾンですね!
これも以下は代表して5人のダンスで3コマずつ描いていきます。
①の肩を細かく震わせる動きからの②の1コマ目のストップモーションで、すでに私は惹きこまれました(笑)。
②③はシャープな動きと女性らしいポーズが交互に登場し、アバンギャルディ独特の「対照的な雰囲気が混在するカオスな世界」の予告編になっているのかもしれません。
④から⑤の1コマ目までは女性らしいポーズと柔らかい動きが続くので、ちょっと安心して観ていられるパートです。
⑤の2コマ目と⑥の1コマ目の、白い袖が寸分違わない角度で止まるその正確さに、「彼女たちはアンドロイドじゃないのか?」と疑った人もいたのではないでしょうか?(笑)
個人技を次々に披露していくヒップホップ系のダンスを見慣れた人にとって、この集団のシンクロ率はまさに「別次元」のパフォーマンスに感じられたのではないかと思います。
⑥の3コマ目のかわいい「アヒルさん歩き(仮称)」でステージ上手へと移動した先には、今度は「笑撃の振り付け」が待っているわけです。
・・・この時点ですでに我々はアバンギャルディの見事な「ツカミ」にすっかりハマっていたということになりますね!
開始から21秒、このユニゾンパートだけですと10秒という短い時間の中で、「高精度のシンクロ」や「女性らしいポーズとシャープな動きの混在」という、アバンギャルディの「魅力の目次」が見て取れる、素晴らしいオープニングでした!
まとめ
アバンギャルディがAGTで披露したダンスの中から「鮮やかなユニゾン」を抜粋してみましたが、いかがでしたでしょうか?
こうして見てみますと、Money,Money,Moneyとシンデレラハネムーンには見応えのあるユニゾンがたくさん含まれているようです。
そして、彼女たちが1つのプログラムのために、どれだけの種類のポーズをとり、どれだけの動きを合わせねばならなかったのか、その労力が垣間見えると思います。
このページを読み終わりましたら、もう一度動画を見てみましょう。
新たな味わいが楽しめるかもしれません。
そんな「反芻(はんすう)」のお役に立てたら幸いです。
最後までお読みいただき、ありがとうございました!
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