2023年も大きな盛り上がりを見せた、アメリカズ・ゴットタレント(AGT)season18。
中でもダンスパフォーマンスは、大人気となったアバンギャルディやChibiUnityなど日本人の決勝進出もあり、これまでにないハイレベルな戦いとなりました。
このページでは、season18で準決勝(ライブショー)に残ったソロダンサー6名、ダンスグループ4組の合計10組の基本情報(エントリー名・出身・年齢やダンスのジャンルなど)や使用された楽曲、審査員の反応(スタンディングオベーション・ゴールデンブザー・レッドブザーなど)をまとめています。
さらに、アクロバット・パフォーマンスの競技に長年携わってきた管理人が、独自の視点で「AGTのダンス審査の傾向と対策」を紐解いてみました。
さてさて、あなたのお気に入りのダンサーは、どうだったでしょうか?
AGT2023 ソロダンサーの基本情報のまとめ一覧表
まずはアメリカズ・ゴットタレントseason18で準決勝に進んだ6名のソロダンサーたちを、一覧表の形式にまとめてみました。
GBはゴールデンブザー、RBはレッドブザー、WCはワイルドカード、STは審査員のスタンディング・オベーション(立ち上がって拍手を贈る)の略号です。
審査員4名はSmがサイモン・コーウェル、Sfがソフィア・ベルガラ、Hdがハイディ・クルム、Hwがハウイ・マンデルの略号としました。
表は大きく、横が6区分の列、縦はチェック17項目分の行がありますので、上下左右にスクロールしてみてください。
準決勝の週 | 1 | 1 | 2 | 3 | 4 | 5 |
出場時の年齢 | 10 | 34 | 36 | 33 | 14 | 7 |
性別 | ♂ | ♂♀ | ♀ | ♂ | ♀ | ♀ |
出身 | アメリカ・ ニューヨーク | *** | アメリカ・ ネバダ州リノ | カナダ (モントリオール) | メキシコ | *** |
カナ漢字表記 | ランブロス・ ガルシア | オレクサンドル・ レシチェンコとMagic Innovations | エリカ・ コフェルト | ジャスティン・ ジャクソン | マリアンドレア ・ビジェガス | エセニヤ・ミヘーワ |
アルファベット表記 | Lambros Garcia | Oleksandr Leshchenko | Erica Coffelt | Justin Jackson | Mariandrea Villegas | Eseniia Mikheeva |
ジャンル | フュージョン | フュージョンと 映像のコラボ | ヒップホップ | タップダンス | フュージョン | ヒップホップ |
予選楽曲 | ビリー・ポーター「Love Yourself」 | バーディ「Wings」 | ジョー・ブッデン 「Pump It Up」と マグーと ティンバランド「Drop」 | ケンドリック ・ラーマー 「Humble」と スヌープ・ドッグ 「Drop It Like It’s Hot」 のメドレー | ティアーズ・ フォー・ フィアーズ 「Mad World」 | ボンバ・エストレオ 「Soy Yo」 |
予選GB/RB | なし | なし | なし | なし | なし | なし |
予選ST | 全員 (Sm,Sf,Hd,Hw) | 全員 (Sm,Sf,Hd,Hw) | 2名(hw,sm) | 全員 (Sm,Sf,Hd,Hw) | 全員 (Sm,Sf,Hd,Hw) | 全員 (Sm,Sf,Hd,Hw) |
準決勝楽曲 | トドリック・ホール「Vogue Zone」 | 不明 | Gユニット 「It’s A Stick-Up」と ブラック・アイド・ピーズ「Pump It Here」、 DMXの「Party Up」 のメドレー | ファレル 「Freedom」 | アタリア 「Nightmare」 | シアラ「Level Up」と メーガン・トレイナー 「Made You Look」 のイントロ |
準決勝RB/WC | なし | なし | RB1名(Sm) 1分30秒 | なし | なし | なし |
準決勝ST | なし | 1名(Hw) | なし | なし | 1名(Hd) | なし |
決勝楽曲 | ーーー | ーーー | ーーー | ーーー | ーーー | ーーー |
決勝ST | ーーー | ーーー | ーーー | ーーー | ーーー | ーーー |
最終順位 | 準決勝で敗退 | 準決勝で敗退 | 準決勝で敗退 | 準決勝で敗退 | 準決勝で敗退 | 準決勝で敗退 |
備考 | American Dance Awardsで「米国の2021年若手男性Dancer of the Year」 | 夫が振り付けと ダンス、妻が4D キューブMagic Innovationsの 映像を担当 | 言語聴覚士。 パンデミックの間、 ダンスの動きで 幼い娘を楽しませた。 | ポップスと アフリカ系音楽 の影響。 古いスタイルと 新しいスタイルの 融合したタップ。 | バレエの基礎+ 様々な舞踊の要素。 表情が豊か。 | TikTok で有名に なったヒップ ホップダンサー。 |
今回のAGT2023では、6名のソロダンサーはすべて準決勝で敗退しました。
予選ではほとんどの出場者が審査員4名全員のST(スタンディング・オベーション)を受けていましたが、準決勝で全員のSTを受けた出場者はおらず、ハウイがオレクサンドルに、ハイディがマリアンドレアに対して行った「のべ2名」のSTにとどまりました。
レッドブザーは準決勝で、エリカ・コフェルトにサイモンが開始1分30秒の付近で下しました。
確かにどの出場者も準決勝のパフォーマンスは予選にくらべるとやや落ちた感があります。
個人的にメキシコのマリアンドレアは、BGT審査員のブルーノに見せたい才能だと感じました。
表情も豊かなので、将来はダンサーだけでなく映像で活躍する「俳優」なども向いているのではないでしょうか。
日本人も大活躍!ダンスグループの基本情報のまとめ一覧表
次に準決勝に進んだ4組のダンスグループを、一覧表の形にまとめてみました。
凡例はソロダンサーのものと同様で、こちらも上下左右にスクロールしてご覧ください。
準決勝の週 | 2 | 3 | 4 | 5 |
出場時の年齢 | 12-25 | *** | 13-26 | 18-27 |
性別 | ♀♂ | ♀♂ | ♀♂ | ♀ |
出身 | フランス | アメリカ・ マイアミ | 日本(新潟) | 日本(大阪) |
カナ漢字表記 | マーミュレイション | フィル・ライト& ペアレント・ジャム | チビユニティ | アバンギャルディ |
アルファベット 表記 | Murmuration | Phil Wright & Parent Jam | ChibiUnity | Avantgardey |
ジャンル | フュージョン | ヒップホップ | フュージョン | フュージョン |
予選楽曲 | TRexMusic9 「Rebirth」 | フラー・イースト 「Sax」 | クレオパトリック 「Hometown」 | 岩崎宏美 「シンデレラ・ ハネムーン」 |
予選GB/RB | GB(Hw) | なし | GB(グループGB) | なし |
予選ST | 2名(Hw,Sf) | 1名(Sm) | 全員 (Sm,Sf,Hd,Hw) | 3名(Sf,Hd,Sm) |
準決勝楽曲 | TRexMusic9 「Mirror」 | Boyz II Men 「Motown Philly」と ソルトインペッパー 「Push It」 | ONE OK ROCK 「Renegades」 | YOASOBI 「アイドル」 |
準決勝RB/WC | なし | RB(Hw) 開始1分 | なし | WC(Hw) 投票で決勝へ |
準決勝ST | 全員 (Sm,Sf,Hd,Hw) | 1名(Sm) | 全員 (Sm,Sf,Hd,Hw) | 3名(Sf,Hd,Sm) |
決勝楽曲 | TRexBeatMaker 「Ocean (Murmuration)」 | ーーー | ONE OK ROCKの 「We Are」 | ABBAの「Mone, Money, Money」 |
決勝ST | 全員 (Sm,Sf,Hd,Hw) | ーーー | 3名(Sm,Sf,Hd) | 全員 (Sm,Sf,Hd,Hw) |
最終順位 | ファイナリスト 3位 | 準決勝敗退 | ファイナリスト | ファイナリスト |
備 考 | 65名。2021年の France’s Got Talent のオーディションを 受け、GBを獲得し 準優勝した。 | ハウイはダンス スタジオの フランチャイズ としては全国に あって欲しいが、 ラスベガスの ショーではない と評した。 | 新潟出身の フュージョン ダンス クルー 27名。 VIBE Jr で 繰り返し優勝。 | バブリーダンスで 有名なakaneが 率いる 19 人の 女性。 2023 年 1 月に Steve Aokiの コンサートに Avantgardeyが コラボして ブレイク。 |
ソロダンサーとは対照的に、ダンスグループは4組のうち3組が決勝に進出し、マーミュレイションは3位に入賞しています。
彼らはフランスのゴットタレントでも準優勝しているチームですから、当然の結果なのかもしれません。
決勝に進めなかったのはPhil Wright & Parent Jamですが、彼らはヒップホップ系チームダンスです。
管理人は個人的に彼のファンキーな振り付けが大好きで、よく動画も拝見しています!
彼らの構成は基本的に、個人技あるいはペアの「見せ場」がステージ前方で披露され、その間他のメンバーはバックダンサーになるというものでした。
この構成は、おそらくサイモンが「マイヤズ(前回優勝したダンスグループ)以前のダンスは正直退屈だった」と批判した「旧態然として」「見飽きた構成のダンス」だったのではないでしょうか。
これに対して、決勝へ進出した3組に共通しているのは、全員によるフォーメーション自体に「意味」や「価値」が高い構成です。
マーミュレイションは腕だけで電光掲示板のように文字や模様の変化を作り出しますし、ChibiUnityのフォーメーションはストーリーを表現するための「役割」が明確にあり、それは刻々と変化する「舞台装置」のようです。
アバンギャルディは多彩なフォーメーションを音楽のハーモニーのように同時進行し、観客の視線をとらえて離しません。
サイモンやハウイが言うように、ダンスカテゴリのレベルは昨年のマイヤズからグッと上がっているのですが、実際にレベルアップしているのはダンスグループが主だと思います。
ソロダンサーを突き放したダンスグループのレベルアップの中身は、まさにこの「フォーメーションの付加価値」だったというわけですね。
審査員の反応は?決勝通過は?・・・ソロダンサーとダンスグループの比較
参考までに、両者に対する審査員の反応や、決勝通過などの成績を比較してみましょう。
STは審査員のスタンディング・オベーション(立ち上がって拍手を贈る)、GBはゴールデンブザー、RBはレッドブザー、WCはワイルドカードの略号です。
ソロダンサー | ダンスグループ | ダンサー合計 | |
予選通過数 | 6組 | 4組 | 10組 |
予選ST合計 | のべ22名 | のべ10名 | のべ32名 |
予選ST平均 (ST合計÷組数) | 3.7人 | 2.5人 | 3.2人 |
予選GB | 0組 | 2組 | 2組 |
予選RB | 0組 | 0組 | 0組 |
準決勝ST合計 | 2人 | 12人 | 14人 |
準決勝ST平均 (ST合計÷組数) | 0.3人 | 3.0人 | 3.5人 |
準決勝RB | 1組 | 1組 | 2組 |
準決勝WC | 0組 | 1組 | 1組 |
決勝通過者 | 0組 | 3組 | 3組 |
決勝通過率 | 0.0 | 0.75 | 0.30 |
GBの数、準決勝でのSTの平均値、WCの数、決勝通過者のいずれもダンスグループが上回っていることがよくわかりますね。
世界各国から集まったダンサーたち
さらに、今回のAGT2023の予選を通過して準決勝に残った10組のダンサーたちの出身地を、世界地図に表してみました。
丸いマークがソロダンサー、長方形のマークがダンスグループで、どちらにも参加者・グループの略称を入れてあります。
また赤い枠で囲んであるのが、決勝に進出した組です。
これはあくまで1次予選(公開オーディション)とその後の2次予選(ジャッジ・カットと呼ばれる非公開の選考)をくぐり抜けてきた10組ですので、予選とそれ以前の応募選考で落ちたダンサーはもっとたくさんいたことでしょう。
こうして見ますと、まずは北半球の中緯度付近から優れたダンサーが来ていることがわかりますね!
縦に狭く横に広い分布になるのには、それなりの理由があると思います。
「縦の狭さ」はやはり経済力といいますか、いわゆる「先進国」がダンスをけん引しているということなのでしょうね。
ダンサー自身は踊るだけなのですが、練習のためにはある程度の広さの平らなフロアーと最低限の音楽設備、できれば大きな鏡や録画設備とモニターなどが必要になってくるでしょう。
発展途上国では、このような設備自体を確保することが難しい場合も多いのではないかと思います。
・・・今回2組の決勝進出グループを出した日本は、やはり豊かで平和な国なのだと実感できますね!
ダンスは世界の共通語・・・ノンバーバル・パフォーマンスの強さ
他方で「横の広さ」は、ダンスが基本的には「ノンバーバル(非言語)」のパフォーマンスであることが強く関連していると思います。
歌唱のパフォーマンスを想像すればわかりますが、他国の言語がパフォーマンスの中で重要な位置を占めていると、その言葉がわからなければなかなか共感できないかと思います。
とくに聴きなれない言語の場合、共感よりも違和感のほうが大きくなりがちです。
しかしダンスの楽曲の場合、ボーカルの言語の影響はかなり限定的なようです。
ダンスに使われる楽曲が聴きなれない言語のボーカルだったとしても、私たちはあまり大きな違和感を覚えませんよね?
歌詞が理解できなかったり発音が聴きなれなかったりしていても、ダンス自体が楽曲のリズムやメロディを適切に表現できているならば、見ている我々はそれにノレますし、ときには一緒に踊ることもできます。
やはりダンスは「世界の共通語」と言えるんですね!
AGTの投票、実は「減点法」?・・・得票に重要なのは「嫌われない内容」!
ただしAGTの準決勝以降で採用されている「一般視聴者からの投票」という選考方法においては、楽曲の「曲調」や「年代」「知名度」あるいは「言語」などは、ある程度の影響力があるように思います。
今回決勝に勝ち進んだ3組のダンスグループの楽曲だけを一覧表にまとめましたので、確認してみてください。
グループ名 | 予 選 | 準 決 勝 | 決 勝 |
Murmuration (マーミュレイション) | TRexMusic9 「Rebirth」 | TRexMusic9 「Mirror」 | TRexBeatMaker 「Ocean(Murmuration)」 |
ChibiUnity (チビ・ユニティ) | クレオパトリック 「Hometown」 | ONE OK ROCK 「Renegades」 | ONE OK ROCK 「We are」 |
Avantgardey (アバンギャルディ) | 岩崎宏美 「シンデレラ・ハネムーン」 | YOASOBI 「アイドル」 | ABBA 「Money, Money, Money」 |
この中でABBAの「Money, Money, Money」は年配層には世界的に有名ですが、どの楽曲も広い世代に知名度が高いとは言えないでしょう。
またネット上の反応で賛否がかなり割れたのは、アバンギャルディの「アイドル」です。
「ダウンロード数第1位」などと若い人には共感されても、年輩の方々には「ノレないスピードのテンポと曲調だったのかもしれません。
ChibiUnityのONE OK ROCKにしても特定の層には強い支持があると思いますが、これも決勝のときのようにダンスの内容に訴求力が弱い場合、共感を得がたい年代の層ができやすい曲調ではなかったでしょうか。
逆に3位になったMurmurationの楽曲は、おそらく彼らのために書き下ろされたというレベルの無名曲ではないかと思いますが、ボーカルのないインストルメンタル曲でした。
ここからMurmurationの楽曲は「共感できない層はもっとも少なかったのではないか」と考えることができます。
現在のところ準決勝以降の順位を左右する「アプリによる視聴者の投票」はアメリカ国内のみですので、優勝を狙うにはまずはアメリカの国民性や視聴年代に考慮する必要はあります。
そして・・・さらに投票ルールへの理解も非常に重要です!
準決勝(ライブショー)ではその週の放送で11組のパフォーマーが演技しますが、視聴者は専用のアプリで各パフォーマーに10点までの点数を与えることができます(詳しくは『ゴットタレントって何?』をご覧ください)。
もちろん、全員に10点を与えることも可能でしょう。
ここで大切なのは、どんなにそのパフォーマーが気に入っていても、10点以上の得点は与えられないということです。
ですから、視聴者がアプリをとおして意思表示できるのは、むしろ「点数を10点から削ること」であり、AGTの視聴者投票は実質「減点法」だと理解しましょう。
ここから考えると、得票数を着実に増やすためには「いかに強い支持層を持つか」というよりも、特定の視聴者層からの「支持を削られないように配慮する観点」つまり「好き嫌いの少ない内容」という考え方が必要なのかもしれません。
・・・ただしそれが「観て面白い」「感動する」ということと一致するとは限りませんが。
ヒップホップ系が決勝に残れないことには理由があった!・・・バトルに特化したダンス文化
さらに昨今のダンスグループのレベルアップにより、ダンス評価の傾向はかなり変わってきたのではないでしょうか。
今回はアメリカからのダンスの決勝進出者は「0」でしたよね?
この結果だけから見れば、現在のアメリカのダンスレベルは日本やヨーロッパに比べて遅れをとっている可能性があるのではないでしょうか。
その原因のひとつは、アメリカで発祥し大々的に普及している「ヒップホップダンス」や「ストリートダンス」にあると思います。
これらのダンスは主に「ダンスバトル」用に進化をとげており、「ステージエンターテイメント」としての進化が遅れているのではないか、と私は考えています。
ストリートでの抗争を避けるために生まれたと言われるダンスバトルは、戦いがグループ対グループであっても、基本は個人対個人になります。
つまり「個人の技能くらべ」、行う「技の難しさくらべ」として発達してきたアクロバティックなダンスなのです。
しかしその一方で、集団による「組織的な動き」や「難しさ以外の芸術的な奥行き」などは置き去りにされてしまったのではないでしょうか。
今回のアメリカ以外のダンスグループを見てもわかるとおり、他の「フュージョン(さまざまなジャンルのダンスの要素が入ったダンス)」と呼ばれるダンスは、「組織的な動き」で複雑な役割分担をしたり、視覚的な形・模様・文字などを構成しています。
また「難しさ以外の芸術的な奥行き」についてですが、決勝に進んだ3組のダンスグループにはいずれも難易度の高いアクロバティックな個人技はほぼありませんが、全体にはストーリーやメッセージがあったり、視覚的に興味を引く何らかのシルエットがあったりしていますよね。
その結果これらのダンスは観客にさまざまなバラエティーのある感情を呼び起こすことができ、たとえばそれは孤独感であったり焦燥感であったり闘争心であったり連帯感であったり達成感であったり笑いであったりします。
このように音楽と体の動きによって、複雑でさまざまな種類の感情が湧いてくる、満足度の高いステージエンターテイメントとしてフュージョン系のダンスは現在どんどん進化しているのだと思います。
しかしこれに対して、ヒップホップやストリート系のダンスは、そのアクロバットの難しさによる「驚き」を観客に与え「尊敬」得ることは得意ですが、それ以外の複雑な感情に訴えることはほとんどできていません。
やはり依然として「技能くらべ」や「腕自慢」のエリアにとどまっていますよね?
ChibiUnityの決勝の記事でも書きましたが、ダンスのストーリーやメッセージの中での「役割」のないアクロバット技は、単なる「難易度」として観客には認識され、その結果、難しい技を見た後にそれより難易度の低い技を見ても、何の感動も持たなくなります。
現在のヒップホップやストリート系のダンスが観客に与えられるものは、フュージョン系の組織的なダンスに比べると圧倒的に「感情的なバラエティ」が少なく、ステージエンターテイメントとしては貧弱と言わざるを得ません。
これまでのヒップホップやストリート系の「個人やペアの技の難易度を見せるためのグループダンス」では、今後しばらくは勝ち残れない可能性が高いと思います。
ハウイやサイモンのRBを避けて、決勝へ!
AGTにはBGTのブルーノやアリーシャのようなダンサー出身の審査員はいませんが、ハウイがダンスを見る眼には厳しいものがあります。
これは以前にアバンギャルディの記事でも触れたのですが、ハウイはダンサーが「自分をかっこよく見せるため」の振り付けや演出を嫌う傾向にあると思います。
私見ですが、ハウイは「それはアイドルがファンを喜ばせるためパフォーマンスであって、芸ではない」とか「ラスベガスのショーに高額のチケット代を払って見に来た観客には、自慢やウインクよりも『他では観られないすぐれた芸』を見せてほしい」などと考えているのではないでしょうか。
サイモンも個々の技の披露が続くだけのチームダンスには飽き飽きしているようですから、従来のヒップホップ系の構成ではもはや準決勝にすら残れないのかもしれません。
準決勝以降では審査員に順位を決定する投票権はありませんが、RB(レッドブザー)を鳴らすことはできます。
視聴者投票の印象を落とさないためには、この2人のRBを避ける準備は最低限必要でしょう。
決勝に残るためには、ダンサー個人の印象を上げるためのアクションよりも、他では見られない「集団による創造性や芸術性」に力点を置いた構成が、今後よりいっそう求められていくのではないでしょうか。
しかし動画配信などによって年々国際化しているAGTでは「非言語パフォーマンス」として、ことばの壁を越えられる「ダンス」の占める位置は非常に重要なものということは依然として変わりないと思います。
・・・これからもどんどん世界からの「才能」がAGTに集まってきてさまざまな挑戦を見せてほしいですね!
最後までお読みいただき、ありがとうございました!
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